テニスの2023年シーズンが始まって約3週間。テニス関係者たちが「間違い探し」ゲームにいそしむ時期だ。メディアやエージェント、ファンや選手仲間たちが、2023年のテニス界に点在する新しいロゴや姿を消したもの、スタッフ交代などに思いがけなく気付くのだ。
大坂なおみ(日本/フリー)のマネージメント会社が世界ランキング2位のオンス・ジャバー(チュニジア)と契約したことから、サッカー界の元スター選手、ジェラール・ピケが率いるKosmos社がテニス界でまたしても大きな動きを見せたことまで、舞台裏での知っておくべき大きな変化を、米テニスメディアBaselineが報じている。
テニスの試合を見ていて、対戦している両選手が全く同じナイキのウェアを着ていて、シューズまでもお揃いだと気付いたことはないだろうか。2023年には、テニスファンたちがこうした事態を目にすることは減るだろう。というのも、ナイキのアンバサダーのうち複数名が、ナイキのロゴのないウェアで南半球での試合に出たり練習したりしているのを目撃されている。
スローン・スティーブンス(アメリカ)やドナ・ベキッチ(クロアチア)など進取の精神に富んだ数人の選手は、新プロジェクトをお披露目。ベキッチは、自身の関わる「ドナ・スポーツ」シリーズの立ち上げに合わせて、男性用高級スポーツウェアブランドであるUomoスポーツの初の女性アンバサダーとなった。ベキッチは「これで、自分がコートで着るウェアを生み出す過程に関わることができる」とInstagramに投稿している。
スティーブンスは「FPムーブメント」に移り、米アパレルブランド「フリーピープル」から派生し一部で熱狂的な人気を誇るこのスポーツウェアブランドのアンバサダーとして、同胞の元全豪女王ソフィア・ケニン(アメリカ)の仲間入りをした。「私のテニスキャリア、そしてコート外での努力に対して、彼らが提供してくれるサポートを楽しみにしているわ!」とスティーブンスはTwitterで発表した。
一方、代理人によると、アンドレイ・ルブレフ(ロシア)はナイキからの大量脱出を巧妙に避け、新たな「状況」を利用して自身のブランドRubloを立ち上げた。これは「洋服についてのものではない」洋服ブランドであり、少なくともまだ店舗でデザインが販売されるわけではない、と代理人のソフィア・タルタコバ氏は語っている。
「ナイキとの契約は続いています。スニーカーはナイキのものです。関係は良いです。でも…以前は契約の制限がありましたが、今は状況が進展して、自分たちのものをやってみようと決めました。彼らはこのブランドをビジネスとは呼んでいません。このプロジェクトは“社会的”なもので、まだそれを売るつもりはありません。徐々に発展させていきます」
ルブレフは先週、これとは別の注目すべき動きを見せた。IMGとの長年の関係を終わりにして、バルセロナを拠点とする小規模スポーツエージェンシーであるコスモス・マネジメントに参加したのだ。このエージェンシーは、ジェラール・ピケのコスモス・ホールディングスが所有している。
元FCバルセロナの有名サッカー選手であるピケは2017年にこのエージェンシーを立ち上げ、「デビスカップ」の企画と改革を行うためにITF(国際テニス連盟)と25年契約を結んだことでテニス界の注目を集めたが、この契約は今月、打ち切りになったことが報じられた。コスモス・ホールディングスは子会社を通して、サッカーやeスポーツ、映像制作などスぺインのスポーツ界で存在感を増している。
ピケのエージェンシーは、今や男女それぞれのトップ10選手を1人ずつ擁している。男子世界ランキング6位のルブレフが、元世界3位のエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)や世界23位のボルナ・チョリッチ(クロアチア)と共に、女子世界ランキング8位のダリア・カサキナ(ロシア)、2020年の「全米オープン」覇者であるドミニク・ティーム(オーストリア)、2022年の「全豪オープン」ジュニア優勝者ブルーノ・クズハラ(アメリカ)らに加わったのだ。
グランドスラムを4度制している大坂は、第一子妊娠のため今年の「全豪オープン」は欠場となったが、チュニジアの先駆的な選手ジャバーが大坂の設立したスポーツエージェンシーEVOLVEと契約したことで、またしても大きな勝利をおさめた。世界2位のジャバーはEVOLVEに加わるため、ビジネスパートナーであり元パリ・サンジェルマンFCの重役であるアデル・アレフ氏と共に、ステファン・グロフ氏が指揮するパリ拠点のトップ・ファイブ・マネジメントを去った。
「新しい年、アデル・アレフとEVOLVEとの新たな始まり」とジャバーはソーシャルメディアで発表している。
昨年5月に大坂と長年そのエージェントを務めたスチュアート・デュギッド氏がIMGを離れて設立したEVOLVEには、「ウィンブルドン」準優勝者のニック・キリオス(オーストラリア)も所属している。ジャバーとキリオスは2人とも、先日公開になったNetflixのドキュメンタリーシリーズ「ブレイクポイント」で大きく取り上げられている。
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「全豪オープン」でのルブレフ
(Photo by Cameron Spencer/Getty Images)