12月にサウジアラビアの首都リヤドで開催される大会に参加することを批判された世界ランキング14位のキャメロン・ノリー(イギリス)が反論した。英BBCなど複数のメディアが報じている。
12月8日から10日にかけてリヤドで開催される「ディルイーヤ大会」には12人の選手が出場し、賞金総額は300万ドル(約4億4000万円)にのぼる。2019年に初めて開催されたこの大会は、新型コロナウイルスの影響で2020年・2021年は中止されたため、今年がようやく2回目の開催となる。今年の大会には、前回大会で優勝した元世界王者のダニール・メドベージェフ(ロシア)、「東京オリンピック」男子シングルスの金メダリストであるアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、世界7位のアンドレイ・ルブレフ(ロシア)、元全米チャンピオンのドミニク・ティーム(オーストリア)、元世界3位のスタン・ワウリンカ(スイス)らが出場を表明している。
そんな中、今月9日にイギリス人男子のトップ選手であるノリーの参加が発表されるや否や、イギリスに本拠を置く世界最大規模の国際人権NGO、アムネスティ・インターナショナルが彼の出場を批判した。
サウジアラビア政府は今年初めにここ数十年で最大となる81人の死刑を一日で執行しており、その中には「逸脱した信念」を抱いていた疑いで死刑になった者もいるという。また、2018年に反体制派のジャーナリストが殺害されて遺体を切断された事件にムハンマド皇太子が関与していたと欧米メディアで報じられるなど、サウジアラビアは非人道的な行為で非難されてきた。そんな同国はここ数年、そういった都合の悪い事実から世界の目を逸らし、イメージアップを図るために人気のあるスポーツの大会を誘致する、いわゆる「スポーツウォッシング」を積極的に行っている。
ボクシングやF1、ゴルフ界はサウジアラビアで大会を開催したことで過去に叩かれており、アムネスティのイギリス支局に務めるフェリックス・ヤーケンスは「ディルイーヤ大会」もスポーツウォッシングの一環であり、ノリーは大会出場を通してそれに加担することになると主張している。
「サウジアラビアがこういった大会で求めているのは、人権について話すことをひたすら避ける、笑顔を振りまく有名スポーツ選手の参加だ。だから、キャメロンは声をあげるべきだ。彼は大きなプラットフォームを持っており、影響力もある。それを活用して、Salma al-Shehab(今年8月、女性の権利を訴えるSNSに関わったとして34年間の禁固刑を科された学生)のような人々との連帯を示すべきだ。ディルイーヤでプレーする誰もが、このテニス大会がサウジアラビアの血まみれの人権違反をスポーツで洗い流そうとしていることにきっと気づくだろう。参加する選手には、人権問題について発言することで、受け身のままスポーツウォッシングに利用されることを拒んでほしい」
これに対してノリーは次のように反論した。「僕は政治家ではないし、個々の政府の政治に関与すべきではないと思っている。僕はプロのテニス選手であり、サウジアラビアでのこのイベントに参加することで世界のトップ選手たちと練習することができ、“全豪オープン”で優勝する可能性にもつながるはずだ」
イギリス人選手で「ディルイーヤ大会」に参加するのはノリーが初めてで、元世界王者のアンディ・マレー(イギリス)は2019年の大会に招待された際に断っていたことを今年の夏に明かしていた。「多くのトッププレーヤーが辞退した。僕があそこに行ってプレーすることはない」とマレーはその際に発言している。
※為替レートは2022年11月10日時点
(WOWOWテニスワールド編集部)
※写真は「ウィンブルドン」でのノリー
(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)